心不全のEFとは?HFrEF・HFpEFの違いと心拡大を理学療法士向けに解説

EF・HFrEF・HFpEFと心拡大の基礎を解説する図解 PT臨床
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心不全患者のリハビリでは、検査値を暗記するだけでなく、患者さんの循環動態と運動時反応を結びつけて考える必要があります。本記事では「心不全のEFとは?HFrEF・HFpEFの違いと心拡大を理学療法士向けに解説」を、臨床で使える順序に整理します。

これまで心不全リハシリーズでは、SpO₂、Borg、血圧、脈圧、BNP、IN/OUT、栄養、運動処方などを扱ってきました。 ただ、少し振り返ってみると、もっと手前にある疑問があります。

「そもそもEFって何?」 「EF 30%って、何が30%なの?」 「HFrEFとHFpEFって何が違う?」 「心拡大って、心臓がどうなっているの?」

循環器のカルテには当たり前のように出てくる言葉ですが、ここが曖昧なままだと、その後のBNPやうっ血、運動時の血圧反応も理解しにくくなります。 そこで今回は、これまでの「心不全リハシリーズ」とは別に、心不全基礎編の第1回として、EFと心拡大をできるだけ基本から整理してみます。

そもそもEFとは何でしょうか?

EFは、Ejection Fraction:駆出率の略です。 心不全で一般的に使われるのは、LVEF:Left Ventricular Ejection Fraction(左室駆出率)です。

簡単に言えば、 左心室に入っていた血液のうち、1回の収縮で何%を送り出したか を表します。 例えば、左室に100mLの血液が入り、収縮後に60mL残ったとします。 すると40mLを送り出したことになるので、EFは40%です。 式では、 LVEF=(左室拡張末期容積-左室収縮末期容積)÷左室拡張末期容積×100 となります。

ただし、リハビリ職が毎回これを計算するわけではありません。

実際には、心エコーやUCGの結果に書かれている、

LVEF 35% EF 45% Simpson EF 55% などの記載を確認します。

「EF 30%」は、血液を30%しか送れていないという意味ではありません ここは最初に押さえておきたいところです。 EF 30%=正常な人の30%しか全身へ血液を送れていない という意味ではありません。

EFは、あくまで左室に入っていた血液のうち何%を送り出したかです。

実際に1回の拍動で送り出す血液量、つまり一回拍出量(SV)は、左室にどのくらい血液が入っていたかにも左右されます。

さらに、1分間に全身へ送る血液量である心拍出量(CO)は、 CO=HR×SV で決まります。 したがって、EFという一つの数字だけから、全身へ送られている血液量そのものを決めることはできません。

それでもEFが低いということは、基本的には、 左室の収縮機能が低下している ことを示す重要な情報です。

EFが低いと、具体的に何が困るのでしょうか?

EFが低い患者を見たとき、単に、 「30%だから重症」 と覚えるだけでは臨床につながりません。 イメージとしては、大きく3つに分けると分かりやすいと思います。

①前に血液を送り出しにくい

②その結果、心臓の手前に血液がたまりやすくなる

③運動時に必要な心拍出量を増やしにくい

です。

①前に送り出せないと、全身への血流が不足することがあります

左室から十分に血液を送り出せなくなると、全身の臓器や骨格筋へ届く血流が不足することがあります。 すると、 疲れやすい 倦怠感が強い 血圧が低い 尿量が少ない 手足が冷たい といった状態につながることがあります。

ただし、EFが低いだけでこれらが必ず起こるわけではありません。 EF 25%でも安定した日常生活を送っている患者もいます。 重要なのは、EFの数字そのものより、その患者で実際に十分な血流を確保できているかを見ることです。

②送り出しにくければ、手前にたまりやすくなります

左室が血液を十分に送り出せず、左室や左房の圧が高くなると、その影響が肺静脈側へ伝わることがあります。 その結果、 労作時の息切れ 起坐呼吸 肺うっ血 肺水腫 などにつながります。 ここで重要なのは、

EFが低い=今必ずうっ血している

ではないことです。

HFrEFでも治療によってうっ血が改善し、安定している患者はいます。 「今うっ血しているのか」は、次回の基礎編で改めて扱います。

③安静時より、運動したときに問題が見えやすいことがあります

リハビリ職として特に重要なのはここです。

安静時には、身体が必要とする血流量はそれほど多くありません。 そのためEFが低くても、安静時には、 HRも落ち着いている 血圧も保たれている SpO₂も正常 息切れもない という患者がいます。 しかし、立位や歩行を始めると骨格筋はより多くの酸素と血流を必要とします。

本来なら、心拍数や一回拍出量を増やして心拍出量を増加させます。 ところが左室収縮機能が低下している患者では、必要になったときに心拍出量を十分増やせないことがあります。 すると、 HRが大きく上がる

血圧が上がりにくい 息切れやBorgが急に増える 疲労が強い 休んでもなかなか戻らない といった反応が表面化することがあります。 だから心不全リハでは、 「EFが何%か」だけでなく、「必要なときにどこまで循環を増やせるか」 を見る必要があります。

これは、これまでの心不全リハシリーズで扱ってきた循環予備能という考え方につながります。

EFによって心不全を4つに分類する

2025年改訂版心不全診療ガイドラインでは、LVEFをもとに心不全を大きく4つに分類しています。

HFrEF

LVEF 40%以下 Heart Failure with reduced Ejection Fraction。 LVEFの低下した心不全です。 左室収縮機能低下が病態の中心にあり、左室拡大や拡張障害を伴うことも少なくありません。

HFmrEF

LVEF 41〜49% Heart Failure with mildly reduced Ejection Fraction。 LVEFが軽度低下した心不全です。 ただし、単純に「HFrEFとHFpEFの中間」と考えればよいわけではありません。

EFは経時的に変化しますし、測定誤差もあります。 そのため、EF 45%という一回の数字だけでなく、以前は何%だったのかを見ることも大切です。

HFpEF

LVEF 50%以上 Heart Failure with preserved Ejection Fraction。 LVEFの保たれた心不全です。 ここは非常に重要です。 EF 60%=心臓は正常

ではありません。

HFpEFでは、LVEFが保たれていても、左室が十分に広がりにくい、左室充満圧が上昇する、心房細動や血管機能異常などが加わることで心不全症状を生じます。 つまり、 HFrEFでは「押し出す力が低下している」ことが分かりやすい一方、HFpEFでは「EFでは見えにくい問題がある」と考えると理解しやすいと思います。

HFimpEF

初回LVEF 40%以下で、その後10ポイント以上改善し、40%を超えた心不全 です。 例えば、 LVEF 30% ↓ LVEF 48% となった場合です。 ここで重要なのは、 EFが改善した=心不全が完全に治った

ではないことです。

現在のEFだけを見るのではなく、過去にどの程度低下していたのかという経過も見ます。

2025年ガイドラインでも、LVEFは経時的に変化しうるため、その変化を含めて評価することが重要とされています。

「EFが低いほど重症」と単純には言えません EFは非常に重要です。 しかし、EFが低いほど必ず症状が強いわけではありません。 EF 25%でも安定して歩ける患者がいる一方で、EF 55%でも少し歩くだけで強い息切れが出る患者がいます。

症状や運動耐容能には、 心拍出量

うっ血

拡張機能 右心機能 弁膜症 不整脈 血管機能 骨格筋 貧血 腎機能

など、多くの要素が関わります。 だから、 「EF 30%だから怖い」でも、「EF 60%だから大丈夫」でもありません。 EFは患者を理解するための非常に重要な入口ですが、答えそのものではありません。

心拡大とEFをどう組み合わせて読むか

もう一つ、心不全患者のカルテや胸部X線で頻繁に見る言葉が、

心拡大

です。 簡単に言えば、胸部X線で心臓の陰影が大きく見えている状態です。 よく使われる指標が、 CTR:Cardiothoracic Ratio(心胸郭比) です。

胸部X線正面像で、

心臓の横幅÷胸郭の横幅×100 として求めます。 一般に、十分な吸気で撮影された立位PA像では、CTR 50%を超えると心拡大を疑う一つの目安になります。 ただし、これも万能ではありません。

ポータブル撮影などのAP像では心臓が実際より大きく写りやすく、吸気不足や体格、撮影条件などでもCTRは変化します。 したがって、 CTR 55%だから心不全が悪化した とは単純には言えません。

心拡大は「心臓そのものが大きくなっている」だけではありません

心臓に長期間、圧負荷や容量負荷が加わると、心筋が肥大したり、心房・心室が拡張したりします。 例えばHFrEFでは、左室収縮機能低下に伴って左室が拡大していることがあります。 高血圧が長期間続けば、左室の壁が厚くなることがあります。 弁膜症では、逆流や狭窄によって特定の心房や心室に負担がかかり、拡大することがあります。

つまり、 「心拡大あり」という一言だけでは、どこが、なぜ大きくなっているのかは分かりません。 そこで心エコーを見ます。

胸部X線と心エコーは、見ているものが少し違います

胸部X線では、まず心臓全体のシルエットを見ます。

一方、心エコーでは、 LVEF 左室の大きさ 左房の大きさ 壁の厚さ 壁運動 弁膜症 右心系 などを、より細かく確認できます。 例えば胸部X線に、 「CTR 60%、心拡大あり」 と書いてあったら、そこで終わるのではなく、心エコーを開いて、

左室が拡大しているのか?

左房が大きいのか?

壁は厚いのか?

弁膜症があるのか?

と見ていくと、患者像がかなり立体的になります。

心拡大=今うっ血している、でもありません

ここも混同しやすいところです。 例えば、長年の拡張型心筋症で左室が拡大している患者では、治療によってうっ血が改善していても心拡大そのものは残ることがあります。 反対に、HFpEFでは心臓の陰影がそれほど大きくなくても、肺うっ血が強い場合があります。 つまり、

心拡大は心臓の構造を考える材料

であり、

うっ血は現在の血液・体液のたまり具合を考える材料

です。 関連はしますが、同じものではありません。

うっ血については、基礎編②で詳しく扱います。

カルテを開いたら、まずここを見る

心不全患者を担当して、心エコーと胸部X線を開いたら、基礎編①としてはまず、

①LVEFは何%か

②HFrEF、HFmrEF、HFpEF、HFimpEFのどれに当てはまるか

③過去のEFはどうだったか

④胸部X線で心拡大はあるか

⑤心エコーで左室・左房など、どこが大きいのか

を見るだけでも、かなり情報が整理できます。 そして次に、 「では、この患者は今うっ血しているのか?」 「前に十分な血液を送れているのか?」 という話へ進みます。

まとめ:EFは「何%か」を見るだけではありません

EFは、左室に入っていた血液のうち、1回の収縮で何%を送り出したかを示します。 心不全では、このLVEFをもとに、 HFrEF:40%以下 HFmrEF:41〜49%

HFpEF:50%以上 HFimpEF:初回40%以下で、その後10ポイント以上改善し40%超 と分類します。 しかし、EF 30%だから全身へ30%しか血液を送れていないわけではありません。

EFが低いときに考えたいのは、 前に送り出しにくくなっていないか。 手前にたまりやすくなっていないか。 必要なときに心拍出量を増やす余裕が小さくなっていないか。 です。 そして胸部X線では、心拡大やCTRを確認します。 ただし心拡大も、 「大きい=今悪い」

と単純には考えません。

胸部X線で全体のシルエットを見て、心エコーでどの部屋がどう変化しているのかを見る。

このくらいまで分かると、心不全患者のカルテはかなり読みやすくなります。 次の基礎編では、 「うっ血とは何か」「低心拍出とは何か」 を、症状、浮腫、胸部X線、IVC、BNP、血圧、脈圧などから整理してみたいと思います。

参考文献

日本循環器学会/日本心不全学会.2025年改訂版 心不全診療ガイドライン.
HFrEF、HFmrEF、HFpEF、HFimpEFの定義、LVEFの経時的変化、HFrEFにおける左室拡大、HFpEFの病態などについて参照しました。
Kitai T, Kohsaka S, Kato T, et al. JCS/JHFS 2025 Guideline on Diagnosis and Treatment of Heart Failure. Circ J. 2025.
注意点
LVEFは心機能を評価する重要な指標ですが、LVEF単独から心不全の重症度、心拍出量、うっ血の程度、運動療法の可否を判断することはできません。
また、胸部X線のCTRは撮影方向、吸気量、体格などの影響を受けます。特にAP像では心陰影が拡大して見えることがあるため、単独の数値ではなく、過去画像や読影所見、心エコーなどと合わせて評価する必要があります。
本記事は、リハビリ職が心不全患者のカルテを理解するための基礎知識を整理したものであり、医師による診断を代替するものではありません。
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ぴっちPT×AI|パパ理学療法士の「臨床やAI自動化の困り…
【臨床10年超|認定理学療法士|修士】
「明日から迷わない臨床」をテーマに脳卒中・整形・難病・考え方を発信
AI自動化やホームラボは、試行錯誤しながら解決した過程ごと記録
Kindle・医療小説・その他サイト制作や子育ても
急性期病院で働きながら、楽しく生きるパパ理学療法士です


免責事項:本記事は理学療法士など医療従事者の学習を目的とした一般的な情報です。個別患者の診断・治療・運動療法の可否を決定するものではありません。実際の臨床では、主治医の指示、施設基準、最新の診療ガイドライン、患者ごとの症状・検査所見を優先してください。

元記事をWordPress向けに再構成・加筆しています。元note記事:【心不全基礎①】EFって何?――HFrEF・HFpEF・HFmrEF・HFimpEFと心拡大の基本

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