⑤【大腿骨】鼠径部痛に悩んでない?「滑走」を知らなきゃ詰む理由

⑤【大腿骨】鼠径部痛に悩んでない?「滑走」を知らなきゃ詰む理由 PT臨床

​【今回のテーマ:傷口ではない「付け根の痛み」の正体。筋肉の渋滞を解消する動的なアプローチ】

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​はじめに:「傷口とは違う場所」が痛む理由

​手術の傷(外側)は癒えてきているのに、足の付け根(前方)が痛くて足が上がらない……。大腿骨近位部骨折の術後、こうした「鼠径部痛」を訴える患者さんは少なくありません。

​実はこの痛みの多くは、股関節のインナーマッスルである「腸腰筋」や、その周囲の組織が「スムーズに逃げきれていない」ことが原因です。

​免責事項

​※本記事は、臨床10年超の理学療法士としての経験に基づく情報提供を目的としており、医療行為ではありません。

※個別の事例は考慮しておりませんので、実際の診断や治療方針については、必ず主治医や所属施設の専門医の指示に従ってください。

※本記事は執筆時点(2026年3月)の知見に基づいています。所属組織とは無関係な個人の見解です。

​1. 「筋肉の渋滞」が挟み込みを引き起こす

​股関節の前方には、腸腰筋や大腿直筋といった強力な筋肉が通っています。手術の炎症や不動(動かさないこと)によって、これらの筋肉が周囲の組織とベタッとくっついてしまう(滑走障害)ことがあります。

​すると、足を曲げようとした瞬間に、筋肉が骨と受け皿の間に「ムギュッ」と挟み込まれてしまうのです。これが、鼠径部を走る鋭い痛みの正体です。

2. 「動かしながらほぐす」滑走誘導の知恵

​この痛みを取り除くには、ただ揉むだけでは不十分です。大切なのは、「圧迫しながら、自力で動かしてもらう」ことです。

​圧迫: 患者さんが「ここが痛い」という鼠径部のポイントを、セラピストの指で優しく、かつしっかりと圧迫します。

​自動運動: その圧を保ったまま、痛みの出ない範囲で、患者さん自身にわずか数センチずつ足を上げ下げしてもらいます。

​こうすることで、圧迫による「滑走の誘導」と、自力運動による「血流の促進」が同時に起こり、筋肉の渋滞が解消されていきます。このアプローチは、驚くほど即時的に可動域を広げてくれることがあります。

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​3. 意外な伏兵「小殿筋」への視点

​もう一つ忘れてはならないのが、お尻の深層にある「小殿筋」です。

この筋肉は股関節の安定性を保つ「要」ですが、ここが硬くなると股関節の関節包を圧迫し、鼠径部の外側寄りに痛みを出します。

​アプローチ: テニスボールや肘などを使って少し深めに触れ、柔軟性を取り戻します。

​代償のチェック: 小殿筋が過剰に頑張ってしまうのは、隣にある「中殿筋」が弱っていることの代償であることも多いのです。

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おわりに:痛みの「質」を見極め、軌道を探る

​「痛いから動かさない」のではなく、「どう動かせば痛くないか」を患者さんと一緒に探ること。筋肉が挟まらない軌道を見つけ、滑りを良くしてあげるだけで、患者さんの足は驚くほど軽く上がるようになります。

​■ 次回予告

次回は、可動域制限の最後の仕上げ。深層の筋肉だけでなく、「大腿骨近位部骨折術後リハシリーズ⑥:皮膚と筋膜への徒手的アプローチ」についてお話しします。

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