【今回のテーマ:停滞した可動域を打破する「組織のゆとり」の見つけ方と関わり方】
※このシリーズは①から読むと理解しやすいです。①【膝関節】OAの痛みを軟骨のすり減りと説明してない?患者さんに不利益を与えない「組織」の話
免責事項
※本記事は、臨床11年目の理学療法士としての経験に基づく情報提供を目的としており、医療行為ではありません。
※個別の事例は考慮しておりませんので、実際の診断や治療方針については、必ず主治医や所属施設の専門医の指示に従ってください。本記事の情報を用いたことにより生じた不利益や損害について、筆者は一切の責任を負いかねます。
※本シリーズは、先達による知見を土台とし、私自身の現場での実感をもとに構成しています。
はじめに:一向に変わらない可動域に悩む日々を越えて
「お皿の上が突っ張る」「裏が痛くて曲げられない」
TKA術後や靭帯損傷後のリハで、屈曲90度に満たないまま停滞してしまう症例。皮膚がパツパツなわけでもないのに、四頭筋のストレッチやお皿のモビライゼーション、脂肪体マッサージを繰り返しても一向に変わらない……。
そんな時、一つの「試行錯誤のヒント」として提案したいのが、筋自体の「粘弾性」の低下に着目する視点です。今回は、私が臨床10年超の中で「これはどうかな?」と試してみて手応えがあった考え方を共有します。
介入前の一番大切な確認
TKA術後の可動域練習においては、主治医の指示および手術記録(術中可動域)を必ず確認してください。人工関節の構造的限界を超えて曲げようとすることは、破損やトラブルを招く恐れがあります。屈曲100度を超えるあたりで一度主治医に確認しておくのが、重要なリスク管理だと考えています。
1. 組織の「ゆとり」を触診で探る
若手の頃は「筋肉が硬い」と言われても、主観的でよく分からないと感じていました。しかし、多くの症例を見る中で、自分なりに「介入の余地がある硬さ」を判断する指標ができてきました。それは、組織の弾力(粘弾性)が失われているような感触です。
感触の指標: 筋を把持したとき、指が入り込みにくい。または、左右に動かそうとしても抵抗感が強い。
健側との比較: 反対側の四頭筋や鵞足部を触った時の「弾力」や「動く幅」を思い出しながら比較してみると、患側の組織がどの程度ゆとりを失っているか、イメージしやすくなります。
2. 変化のきっかけになるかもしれない「5つのポイント」
膝を固めて歩いている方では、以下のような部位の粘弾性が低下しているケースを経験します。「膝」と注視していると気が付きにくい隣接関節に含まれる位置も多いですが、実際にはこれらが硬いと膝のツッパリとして表出されるため無視できない存在と考えています。
大腿四頭筋(膝蓋骨のすぐ上): 組織が固まっていないか。
鵞足部(縫工筋・薄筋): 大腿骨遠位2/3から停止部にかけて。
内側ハムストリング遠位部
腓腹筋の起始部: 大腿骨の内側・外側上顆付近。ここが盲点になることがあります。
前脛骨筋(近位部): 下から組織を引っ張り続けていることがあります。
3. 臨床的な工夫:粘弾性を引き出すアプローチ
単にストレッチをするだけでなく、組織に「遊び」を作るようなイメージで関わってみるのも一つの手です。
把持とリリースの反復: ターゲットの筋を掴んで離す、あるいは優しく左右に揺らす動きを繰り返します。
自動運動の併用: 腓腹筋近位や前脛骨筋を圧迫(ホールド)したまま、患者さんに足関節の底背屈をしてもらい、深部の滑走を促す方法もあります。
角度の設定: 私は「屈曲限界より少し緩めた、突っ張るギリギリだけど辛くない角度」で試すことが多いです。
最後に:小さな変化を掬い上げる
このアプローチによる変化は、角度という数字にはすぐには現れないかもしれません。ですが、患者さんの訴えに耳を澄ませてみてください。
「お皿の下が突っ張っていたのが、今は裏が気になる」というように、場所が移動していることがあります。「さっきは、特にどのあたりが一番気になりましたか?」と具体的に聞いてみる。介入による組織の変化を、患者さんと一緒に確認していくプロセスこそが大切だと感じています。
■ 次回予告
次回(第6回)は、患者さんの心理的防御を和らげるために、私自身が試行錯誤してきた「ガチガチの膝を曲げるコツ②:座位・臥位での戦略的ポジショニングと誘導」についてお話しします。
次回の記事はこちら:⑥【膝関節】ガチガチ膝を曲げるため、どこに位置しどう手を当てるか考えてる?使えるものは何でも使う
前回の記事はこちら:④【膝関節】そのパテラセッティング、機能的ですか?伸展ラグを埋める戦略
この「膝関節シリーズ」を最初から順に、または一覧で確認したい方は、以下のリンクをご活用ください。
このテーマをもう少し広げて読みたい方へ
この記事の内容を実際の場面へつなげるときは、次のような判断で迷いやすくなります。
- 硬さを筋力低下だけで説明してよいか
- 時間や反復で変わる硬さをどう見るか
- 介入後の変化を何で確かめるか
関連する具体例や、別の場面での考え方は、note・Kindle・ツールにも整理しています。


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