⑤【歩行再建】足の痙縮ってどうする?原因別ハンドリングとAFO

足の痙縮とAFOの記事サムネイル PT臨床

​【今回のテーマ】臨床で難渋しやすい「足関節の痙縮」を2つのパターンに分類し、全身の代償を防ぐハンドリングや装具選択の考え方を解説します。効率的な筋出力を引き出すための環境設定が学べます。

※本記事は歩行再建シリーズの各論です。歩行についての大切な知識が多く含まれる導入記事:[▶ ①【歩行再建】長下肢装具をなんで使うかわかっていますか?] から読むのをお勧めします。

​【免責事項】

​※本記事は、臨床10年超の理学療法士としての経験に基づく情報提供を目的としており、医療行為ではありません。金融商品、物品についての記載があってもそれらの使用を推奨するというのはあくまで個人の見解であることを明記します。それによって生じたいかなる問題も責任を取りかねます。

※個別の事例は考慮しておりませんので、実際の診断や治療方針については、必ず主治医や所属施設の専門医の指示に従ってください。

※本記事は執筆時点(2026年3月)の知見に基づいています。所属組織とは無関係な個人の見解です。

​はじめに

脳卒中リハビリにおいて、弛緩性麻痺からの回復過程以上に難渋することが多いのが「痙縮」への対応です。

私自身、若手の頃は大きな葛藤の中にいました。装具を用いて歩行量を確保し、膝や股関節の機能改善を図ることはできても、いざ足関節の評価段階になると足が止まってしまうのです。

「このまま歩かせ続ければ、連合反応によって痙縮を強めてしまうのではないか」 「かといって歩くことを控えれば、下肢全体の廃用を進行させてしまうのではないか」

この板挟みの中で試行錯誤を繰り返す日々でした。当時は、自身のハンドリングや判断に明確な基準がなかったため、結果として患者様の痙縮を強めてしまったり、逆に廃用を招いてしまったりすることもありました。当時の私には、その状況を打開するための「答え」が見えていなかったのだと思います。

その後、先輩方からのご指導や多くの書籍から学びを得る中で、痙縮を単なる「硬さ」ではなく、原因別に整理して捉える視点を持つことができました。

現在もより良いアプローチを模索中ではありますが、当時の私と同じように悩む若手セラピストに向けて、目指すべき方向性を見出すためのポイントを整理して共有します。

​1. 痙縮の2つの分類

​痙縮は大きく分けて以下の2つに分類して評価する必要があります。

​筋腱自体の硬さ・過敏性: 筋や腱自体の粘弾性が不足し、過伸長と誤解されて反射が起きる状態。

​上位運動ニューロンの過敏性: 全身的な防御反射。他部位の不安定性を代償して緊張が高まっている状態。

​2. 慢性化した痙縮への介入戦略

​慢性化した痙縮であれば、まずは①「末梢の硬さ」の改善を図ります。振動 刺激や温熱、筋自体のリラクセーションを行って組織を柔らかくしてからしっかりとストレッチを行い、痙縮筋の拮抗筋(前脛骨筋など)を鍛えていきます。

​②「中枢の過敏性」の場合、全身の筋出力バランスが異常になっていることが多くあります。例えば立位で下腿三頭筋が過剰に収縮する場合、膝や股関節、体幹の不安定性や固定性を代償し、結果として動作時の緊張亢進につながっています。そのため、まずはしっかりと他部位を鍛える必要があります。

3. 全身の代償を防ぐハンドリング

​ここで注意すべきは、下腿三頭筋が緊張したまま他の筋を収縮させてしまうと、ヘブ則(神経の結びつきの強化)に従い、緊張亢進方向にパターンが強化されてしまう点です。

​足先や股関節などに代償が起きていないかを観察し、セラピスト自身の体や物品を使って代償のない形を作った上で練習することが重要です。

​【具体的な誘導例:ブリッジ運動】

​セラピストの片手で患者様の腰、反対の手で大腿〜膝を抑え、股関節の正しい運動方向を誘導する。

​さらに、セラピストの片膝で患者様の下腿後面を、反対の膝で足底から抑え、膝と膝で挟み込んで足関節の角度を調整した上で練習を行う。

​こうしたセラピストの全身を使った細やかな調整は、ボバースの概念を説明してくれている書籍に詳しくまとめられています。用語が難解なため私もまだ読み進められていない部分がありますが、臨床を通して地道に身につけていく価値のある技術です。その日から使えるといったものでは、促通の概念が強めではありますが、こちらの川平法の書籍がわかりやすいです。私はこの書籍で当座をしのぎつつ少しずつボバースを学んでいます。

​4. 装具選択の考え方

​発症初期からの極めて強い痙性や、大脳基底核の問題に起因する痙縮に対しては、徒手的な介入だけでなく装具や環境調整で付き合っていく視点も必要です。

​下垂足に対して前脛骨筋の活動を促す「ゲイトソリューション」は、弛緩性麻痺からの回復過程では非常に強力です。しかし、痙縮が強い場合には不向きであり、しっかりとした金属支柱付き装具やシューホン型装具が適応となると考えるべきです。

​【最後に】

​足関節の痙縮は局所だけの問題ではありません。全身の代償を見逃さず、適切なハンドリングや装具を用いて「正しい運動」を導き出していきましょう。

この「歩行再建シリーズ」を最初から順に学びたい方は、以下のリンクをご活用ください。 ・[▶ このシリーズの記事一覧はこちら]

また、脳卒中の知識を網羅的に把握したい方には、以下の関連マガジンもおすすめです。
・[▶ 【脳卒中病態シリーズ】病型ごとのリスク管理]
・[▶ 【高次脳・姿勢定位シリーズ】麻痺だけじゃない複雑な症状の攻略]

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