【新人・若手PTへ】ベテランは1〜2年で一人前になれると思っていない

【新人・若手PTへ】ベテランは1〜2年で一人前になれると思っていない PT臨床

​■ ここまでの整理

理学療法士として大切だと思うことは、今の全力で失敗と修正を繰り返し、自分のペースで引き出しを増やす。ただし、長く働き続けるために「患者の命・情報漏洩・自身の心身」の3つだけは守り抜く。

はじめに

この記事は、社会人1年目の自分に向けて書いたつもりでも綴っています。

臨床に出たばかりの頃は、「早く結果を出さなければ」「先輩たちのように上手く立ち回らなければ」と焦る気持ちがあると思います。自分の知識や技術の不足に直面し、落ち込む日々も多いでしょう。

​しかし、臨床現場で長く働く中で見えてきた一つの事実があります。

それは、「ベテランは、若手が1〜2年で完璧な一人前になれるとは思っていない」ということです。

​理学療法士としての職業人生はとても長いです。今回は、若手セラピストが焦らず着実に成長するためのマインドセットと、長く働き続けるために守るべき基準についてお伝えします。

​目の前の患者さんに「今の全力」で向き合い、修正を繰り返す

​臨床において最も重要なのは、最初から完璧な正解を出すことではありません。

​今の自分の知識と技術で、目の前の患者さんにできる最善を提供する。

​もし上手くいかなければ、「次はどうすればもっと良くなるか」を考え、修正する。

​次の介入でも上手くいかなければ、また原因を分析し、別の方法を探す。

​この「評価→介入→失敗→修正」のサイクルを回し続けること。これに尽きます。最初から自分に合った、あるいは患者さんに合ったアプローチが分かるわけではありません。

上手くいかない経験を積み重ね、それを次に活かす過程こそが、あなたの臨床における「引き出し」を確実に増やしていきます。

​また、ここで言う「今の全力」は、その時の自分自身の体調に合わせて調整して構わないと思っています。理学療法士としての職業人生は非常に長いです。前半に無理をして頑張りすぎ、後半に体調を崩して動けなくなってしまうよりも、自分のペースで少しずつ吸収していく方が持続可能です。そして、職業人生の中盤から後半にかけて、その積み上げた経験に裏打ちされた状態で、多くの患者さんや後輩を助けていけるようになることのほうが、ずっと価値があると考えています。

​一人前になるには「5〜8年」かかる

​臨床経験を重ねていくと、一人で全てを判断し、多様な症例に対応できるようになるまでには、概ね5〜8年程度の時間が必要だと実感します。

​正直なところ、私自身が今「完全な一人前」と言えるのかどうかはわかりません。しかし、去年の自分、その前の自分と比べると、確実に前に進んでいる実感はあります。そして、これまで諸先輩方がそんな私を温かく見守り、接してくださったことを振り返ると、「ベテランは、若手が一人前になるには時間がかかるものだと分かっているんだな」と、ようやく気づくことができました。

​だから、焦る必要はありません。1年目からすべてを上手くこなそうとするのではなく、「昨日の自分より、今日の自分が一つでも多くの引き出しを持てているか」に焦点を当ててください。時間をかけて、自分に合うスタイルと、患者さんに適した引き出しをじっくりと構築していけば良いのです。

​もし「早く一人前になれ」と迫る先輩がいたら

現場には、「1〜2年で早く一人前になれ」とプレッシャーをかけてくる先輩もいるかもしれません。実際、成長スピードには個人差があり、早く一人前になる方もいることでしょう。

しかし、どんなに臨床技術が優れていたとしても、全員にそうした要求をしてくる場合、その先輩自身も、厳しい環境の中で育ってきた価値観をそのまま持っているのかもしれません。あるいは、職場自体が一人のスタッフを使い倒すような環境になっている可能性もあります。

​最初から完璧な人などいません。もしそうした先輩や職場に当たってしまった時は、「はい、すみません」と適度に合わせながら淡々と自分の力をつけるか、いっそ働く場所を変えるという選択肢も持っておいてください。あなたが最も優先すべきは、自分自身の長い職業人生を、心身ともに持続可能なものにしていくことです。

​長く働き続けるために意識してほしい「3つの基準」

​試行錯誤と失敗は成長に不可欠ですが、「取り返しのつかない失敗」だけは確実に避けなければなりません。これらは「言葉では分かっていても、行動の際に何気なくやってしまいがち」な性質を持つため、現場に出る前から一段、意識を高めておく必要があります。

​1. 患者さんの命に直結するような重大な医療事故

ここで言うのは、「気管切開部に布団をかけて窒息させてしまう」「CV(中心静脈)カテーテルを誤って引き抜いてしまう」といった、直ちに命に関わるレベルの重大な事故のことです。こうした「絶対にあってはならない事態」に対しては、常に緊張感を持ち、事前のリスク管理を徹底してください。

​一方で、臨床ではいくら気をつけていても「転倒」などのアクシデントが起きてしまうことはあります。もし転倒させて深く落ち込んでいる若手がいたら伝えたいのですが、先輩たちも皆、そうした悔しい経験と反省を経て、次の予防策という「引き出し」を増やしてきています。命に関わる絶対的なラインと、防ぐ努力をした上で起きてしまった事象は分けて考え、どうか自分を責めすぎず、次に活かす糧にしてください。

​また、患者さんの「急変」についても同様です。急変の兆候は、後になって振り返って初めて「あの時のあれがサインだったのか」と気づくことも少なくありません。最初から全てを見抜ける人はいませんし、その気づきを次の予防という「引き出し」に変えていくことが大切です。

少し極端な言い方かもしれませんが、人間の死亡率は100%であり、病院に来れば全員が必ず治るというものでもありません。医療は、医師、看護師、検査技師、薬剤師、管理栄養士など、多職種によるチームで行うものです。あなた一人で全ての責任を背負い込む必要はありません。一人のスタッフとして、目の前の患者さんにより良いチーム医療を提供できるよう、周りと協力しながら進んでいけば良いのです。

​2. 無自覚な守秘義務違反(情報漏洩)

知識としては理解していても、最も何気なくやってしまいがちなのがこれです。SNSでの何気ないつぶやきや、院外での会話など、「気がつかずにルールを破り、たまたま見つかっていないだけ」という状況に陥りやすい領域です。いざ情報を発信・共有する際は、「これは本当に問題ないか?」と一呼吸おいて確認する習慣が必要です。

​3. 自分自身の心身を壊すこと

「患者さんのために」「早く成長するために」という思いから、無意識のうちに限界を超えて無理をしてしまうことがあります。心身の健康があってこその臨床です。不調を感じたら休む、一人で抱え込まず周囲に助けを求めることも、長く働き続けるための重要なスキルです。

​まとめ

​理学療法士としてのキャリアは、数十年と長く続くものです。

患者さんの安全、情報の取り扱い、そして何より自分自身の健康。この「3つの基準」だけはしっかりと意識した上で、目の前の患者さんに「今の自分ができる無理のない範囲」で向き合ってみてください。

​上手くいかない時は、決して落ち込みすぎる必要はありません。それを次の介入にどう活かすかを考える。その地道な経験の積み重ねが、数年後のあなたを、頼りになる理学療法士へと育ててくれます。

​本当に焦らなくて大丈夫です。自分の体調を大切にしながら、じっくりと引き出しを増やしていきましょう。

このnoteの全体像を知りたいあなたへ

サイトマップはこちら:まずはこちらを読んでください

全記事一覧はこちら:増えに増えて120記事近くあるので一覧はこちら

10年以上の理学療法士としての経験から、新人〜中堅の方が明日から困らないための知恵を体系化して発信しています。

リスク管理・急変対応の要点

現場で役立つ患者さん・他職種への振る舞いのコツ

その他にも生活発信・キャリアの記事を公開中

30代医療職夫婦の子育て・時短家電・生活発信はこちら

理学療法士として・ノートクリエイターとしてのキャリア・仕事術はこちら

この記事がいいなと思ったらスキとフォローをお願いします

コメント

タイトルとURLをコピーしました