④【新人:脳卒中】起き上がり介助は重いと感じたら危険!真っ直ぐ起こすのは危険です

④【新人:脳卒中】起き上がり介助は重いと感じたら危険!真っ直ぐ起こすのは危険です PT臨床

【今回のテーマ】

新人理学療法士に向けた脳卒中リハビリの第4回です。片麻痺患者さんに対する安全で力学的に正しい「起き上がり介助」と「座位保持」のポイント、そして肩関節亜脱臼の予防といったリスク管理の判断基準が学べます。

【免責事項】 ※本記事は、臨床10年超の理学療法士としての経験に基づく情報提供を目的としており、医療行為ではありません。金融商品、物品についての記載があってもそれらの使用を推奨するというのはあくまで個人の見解であることを明記します。それによって生じたいかなる問題も責任を取りかねます。 ※個別の事例は考慮しておりませんので、実際の診断や治療方針については、必ず主治医や所属施設の専門医の指示に従ってください。 ※本記事は執筆時点(2026年3月)の知見に基づいています。所属組織とは無関係な個人の見解です。

【脳卒中シリーズ④】起き上がり介助が重いなら要注意!安全な離床と麻痺側を守るポイント

前回は、離床の可否を判断するための病型別バイタル管理と、危険なサインを見抜くチェックリストについてお伝えしました。(※前回の内容を軽くおさらいしたい方は [▶ 前回の記事へ戻る] からどうぞ) 今回は、安全が確認できた上で、いよいよ患者さんを実際に起こす「起き上がり」と「座位保持」の具体的なアプローチに入ります。

はじめに

「さあ、リハビリの時間です。真っ直ぐ起き上がりましょう!」 かつての私は、患者さんにそう声をかけていました。でも、脳卒中を経験したばかりの患者さんにとって、それは身体に過度な負担を強いる行為だったのです。 子育てで子供が寝返りから徐々に起き上がる過程を見るように、リハビリも同じ手順を踏むことが大切です。今回は、非麻痺側という「頼れる相棒」をフル活用して、まずは「自分で動ける!」という自信を持ってもらうためのコツをお伝えします。

1. 「真っ直ぐ」よりも「回って」起きる

これまで健康だった患者さんは、無意識に腹筋を使って真っ直ぐ起きようとします。しかし、片麻痺がある状態でこれをやると、麻痺側が重石になってしまい、かえって動けません。

パパPTの「最初の一言」 「しばらくは、動かしやすい方の手足を軸にして、転がるように起きてみましょうね」 まずはこの説明が不可欠です。基本戦略は、「非麻痺側を下にした寝返りから起き上がる」ことです。

「行ったり来たり」が筋肉を育てる 一度に座り切る必要はありません。 肘をつく 手を伸ばす 少し座る また手をつく → 肘をつく → 肩をつく このように、座る一歩手前で「行ったり来たり」を繰り返すだけでも、体幹の筋肉には良い刺激が入ります。「座ること」をゴールにするのではなく、その過程の動きを楽しむ余裕を持ちましょう。

2. 【重要】離床の前に必ずチェック!麻痺側の「肩」を守る

起き上がる前に、絶対に忘れてはいけないことがあります。それは麻痺側上肢の保護です。

肩の下方脱臼リスク 麻痺が重い(ブルンストロームステージⅢ以下など)と、肩を支える筋肉が働かず、腕の重みだけで肩の関節が外れそうになる「下方脱臼(亜脱臼)」が起こります。

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三角巾やアームスリングの活用: 座る前に、必ずスリング等で上肢を吊るようにしましょう。 「ブラ下がり」を防ぐ: 何もせずに座らせると、腕の重みで肩に強い痛みが出てしまい、その後のリハビリが苦痛になってしまいます。 座っている間も、麻痺側の手が「ブラ〜ん」と垂れ下がっていないか、常に意識してあげてください。

3. 座位保持:後ろのあなたは「確実な支え」

ようやく座れた!と思っても、急性期の患者さんはお腹に力が入りにくく、前や後ろに倒れ込みやすい状態です。

「念のため」が信頼を作る 実際には倒れなさそうに見えても、しっかり後ろから支えておいてください。「この先生が後ろにいてくれれば絶対に倒れない」という安心感があって初めて、患者さんは手足の力を抜いて練習に集中できます。

麻痺側への転倒を防ぐ「クッション作戦」 患者さんはどうしても麻痺側に倒れやすくなります。 非麻痺側の肘の下に枕や掛け布団を丸めて置く。 肘でしっかりもたれられる「支点」を作る。 こうして非麻痺側でしっかり支えを作ってあげることで、徐々に介助者が手を離しても座れる時間を延ばしていきます。

4. 「撤退」も勇気。首までグラグラなら無理は禁物

もし、座らせてみたものの首までグラングランで、自分の力で頭を支えられないような状態なら、無理に端坐位(ベッドの端に座ること)を続ける必要はありません。

さっさとリクライニング車椅子へ そんな時は、迷わず全介助でリクライニング車椅子に移ってしまいましょう。ベッドと同じように背もたれにもたれ、頭を安定させた状態で外の景色を見たり、離床すること自体に慣れてもらう方が、今の時期には有益です。

おわりに:非麻痺側を「生活の軸」にする

まずは非麻痺側を使って、自分で起き、自分で座れるようになること。それが「非麻痺側を軸とした生活」の第一歩です。 真っ直ぐ起きられないことを嘆くのではなく、肩をしっかり保護した上で、動く方の手で自分を支えられたことを一緒に喜びましょう。その「安心」が、次のステップへと繋がっていきます。

【最後に】

最後までお読みいただき、ありがとうございました。 起き上がりや座位保持は、ただ起こすのではなく、患者さんの負担を減らし、肩などのリスクから守るための重要な技術です。この記事が皆さんの明日からの臨床の助けになれば嬉しいです。

次回は、いよいよ難関となる「移乗」の場面において、麻痺があってもやりやすい起立・方向転換の工夫をまとめた [▶ 第5回 脳卒中の患者さんの移乗(トランスファー)] をお届けします。ぜひ続けてご覧ください。

この「脳卒中シリーズ」を最初から順に、または一覧で確認したい方は、以下のリンクをご活用ください。 ・[▶ このシリーズの記事一覧はこちら]

また、今回の離床に関わるリスク管理や、装具を用いたアプローチについてさらに深く学びたい方には、以下の関連マガジンもおすすめです。
・[▶ 【リスク管理シリーズ】急変を防ぐための実践的観察ポイント]
・[▶ 【脳卒中装具シリーズ】歩行を劇的に変えるデバイスの選び方]

note内の記事を順番に体系的に学びたい方は、以下の [▶ サイトマップ(まずはこちら)] へどうぞ。 すべての記事を一覧でざっと探したい場合は、 [▶ 全記事一覧(全記事から探したい方はこちら)] をご用意しています。

このテーマをもう少し広げて読みたい方へ

この記事の内容を実際の場面へつなげるときは、次のような判断で迷いやすくなります。

  • 真っ直ぐ起こすと重くなる理由は何か
  • 患者さんの力をどこで引き出すか
  • 介助者の腰を守る位置をどう作るか

関連する具体例や、別の場面での考え方は、note・Kindle・ツールにも整理しています。

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