【今回のテーマ:手術は「動くための許可証」。術後リハの真の目的を再定義する】
はじめに:手術はゴールではなく、スタート
大腿骨近位部骨折の患者さんを担当したとき、私たちはまず何を考えるでしょうか。
「脱臼をさせないように」「早く歩けるように」「筋力を戻さなきゃ」
そんな焦りが先行してしまいがちです。しかし、90代の超高齢者であっても手術が選択される本当の理由を、私たちは再確認しておく必要があります。
それは、「寝たきりによる二次的な衰弱(廃用症候群)を防ぐため」です。
12週間の保存療法(安静)に耐えられる体力は、超高齢者には残されていません。手術は、翌日から「動くための許可証」を得るための手段なのです。
免責事項
※本記事は、臨床10年超の理学療法士としての経験に基づく情報提供を目的としており、医療行為ではありません。
※個別の事例は考慮しておりませんので、実際の診断や治療方針については、必ず主治医や所属施設の専門医の指示に従ってください。
※本記事は執筆時点(2026年3月)の知見に基づいています。所属組織とは無関係な個人の見解です。
1. 術式の裏側にある「リスク」を読み解く
手術が終わった直後のリハビリで、私たちが最も気にするべきは「組織の修復過程」です。
人工骨頭置換術: 前外側、あるいは後外側から侵入した「傷」が癒えるまでは、脱臼のリスクが伴います。特に内転方向への動きには、クッションを挟むなどの物理的な配慮が、患者さんの安心感に直結します。
固定術(ピンやボルト): 脱臼はありませんが、固定具が骨から突き抜けたり(cut out)、位置がずれたり(back out)するリスクを常に念頭に置きます。定期的なレントゲン確認は、医師だけでなく私たちセラピストにとっても「安全の指標」です。

2. 小転子骨折という「隠れた注意点」
見落としがちなのが、「小転子」の骨折です。
ここは荷重には直接関わりませんが、大切な「腸腰筋」が付着しています。
無理に早期から足を持ち上げる運動(SLRなど)を強いると、小転子が剥離してしまい、結果として股関節を曲げる力が著しく低下してしまうことがあります。「良かれと思って行った運動」が、回復を遅らせていないか。医師と共有し、必要なら介助で動きをサポートする柔軟さが求められます。

おわりに:リハビリの真価は「廃用」との戦いにある
手術そのものの成功を、リハビリテーションの成功に繋げるのが私たちの役割です。
術後の痛みや腫れ、そして「また折れるのではないか」という患者さんの恐怖心。これらを無視して手技に走るのではなく、まずは病態を正しく理解し、「今はどこまで動かして安全か」を明確に提示すること。
それが、患者さんとの信頼関係を築く最初の一歩になります。痛い中での
■ 次回予告
次回は、患部に触れる前に行うべき極めて重要な戦略。「大腿骨近位部骨折術後リハシリーズ:『動けない』を『動ける』に変える、健側(良い方の足)の活用術」について深掘りしていきます。
最後までお読みいただきありがとうございます。私のnoteでは、整形外科以外にも臨床10年超の中で培った知見を領域ごとにマガジンにまとめています。
【膝関節の理学療法の実際:硬さ・ラグ・痛み】
【脳卒中の歩行再建:長下肢装具から痙縮まで】
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このテーマをもう少し広げて読みたい方へ
この記事の内容を実際の場面へつなげるときは、次のような判断で迷いやすくなります。
- 超高齢でも手術を選ぶ目的は何か
- 術式と荷重指示をどう確認するか
- 退院後の生活から何を逆算するか
関連する具体例や、別の場面での考え方は、note・Kindle・ツールにも整理しています。


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