⑧【新人:脳卒中】長下肢装具歩行の介助と着脱で困ってない?こうするといいよ

⑧【新人:脳卒中】長下肢装具歩行の介助と着脱で困ってない?こうするといいよ PT臨床

【今回のテーマ】

新人理学療法士に向けた脳卒中リハビリの第8回です。いざ長下肢装具(KAFO)を使用する際、多くの新人が最初につまずく「車椅子上での着脱方法」と、歩行練習における「視線・持ち手・重心」の介助の三原則について、教科書には載っていない実践的なコツを学びます。

【免責事項】 ※本記事は、臨床10年超の理学療法士としての経験に基づく情報提供を目的としており、医療行為ではありません。金融商品、物品についての記載があってもそれらの使用を推奨するというのはあくまで個人の見解であることを明記します。それによって生じたいかなる問題も責任を取りかねます。 ※個別の事例は考慮しておりませんので、実際の診断や治療方針については、必ず主治医や所属施設の専門医の指示に従ってください。 ※本記事は執筆時点(2026年3月)の知見に基づいています。所属組織とは無関係な個人の見解です。

【脳卒中シリーズ⑧】長下肢装具(KAFO)の着脱と歩行介助!教科書にない実践テクニック

前回は、重度麻痺の方に対してなぜ「長下肢装具」を使って早期から歩行練習を行うのか、その生理学的な理由(CPGの活用など)と将来の生活を見据えた目的について解説しました。(※前回の内容を軽くおさらいしたい方は [▶ 前回の記事へ戻る] をご利用ください) 今回は、その長下肢装具を実際に現場で使う際の最大の壁、「着脱」と「介助のコツ」についてお伝えします。

はじめに

「よし、長下肢装具(KAFO)で歩くぞ!」と意気込んだものの、最初の関門は「歩く前」にあります。そう、装具の着脱です。教科書ではサラッと書かれていますが、実際にやってみると「手が足りない!」とパニックになりがちです。今回は、介助者の腰を守り、スムーズに練習に入るための実践的なコツをお届けします。

1. 最初の難関:車椅子での「着脱」をスムーズにする裏技

車椅子に座った患者さんに装具を履かせようとすると、麻痺足は重くて上がらず、下(足部)を合わせようとすれば上(大腿部)が車椅子のフレームに挟まる……。この「あっちを立てればこっちが立たず」状態は、新人さんなら誰もが通る道です。

解決策:自分の太ももを「作業台」にする 正面に座る: 患者さんの正面に椅子(あればセラピストチェア)を用意して座ります。 足を持ち上げる: 患者さんの麻痺足を下から持ち上げ、長下肢装具を腿の下にスッと滑り込ませます。 自分の膝に乗せる: 自分の太ももの上に、患者さんの麻痺足(装具ごと)を乗せて固定します。 こうすることで両手が自由になり、装具の下(足部・下腿部)から順にしっかり固定していくことができます。

⚠️ パパPTの注意ポイント ベルクロ(マジックテープ)や革の部分が、患者さんの足の下に巻き込まれないよう細心の注意を払ってください!一度巻き込まれると、重い足をもう一度持ち上げてやり直しになります。これだけでお互いヘトヘトになってしまうので、最初に「巻き込みチェック」を忘れずに。着用が適切にできていないと、歩行中に痛みが出たり、効果が半減したりします。

2. 介助のコツ:視線・持ち手・重心の三原則

【視線は「遠くの目印」に預け、背後から支える】 介助者が陥りやすいミスの一つに、麻痺側の足元を「覗き込んでしまう」ことがあります。足元を見ようと体が前に倒れると、結果として介助者の骨盤が後ろに引かれ、患者さんの体も後ろに引き込んでしまいます。これでは、スムーズな前進(推進力)を妨げてしまいます。

ここで大切なのが、患者さんと介助者、双方が「どこを見るか」です。鏡を見るのも一つの手ですが、もっと分かりやすいのは「前上方にある具体的な目印」を決めることです。

「壁の時計を見ましょう」 「あの非常口のマークを見て歩きましょう」 「エアコンの端を見てください」

このように、少し高い位置にある具体的な目標物を指定すると、患者さんの頭が自然と上がり、体幹がスッと伸びやすくなります。視線が安定すれば、ふらつきも抑えられ、介助者の負担も驚くほど軽くなります。

【持ち手をどこにするか】 教科書的には装具にループ(紐)をつけて操作する方法が紹介されることもありますが、慣れないうちは力加減が難しく、振り出しがバラバラになりがちです。私がお勧めするのは、「装具の一番上の金具(大腿半月)を後ろから直接持つ」方法です。

手首のスナップを使い、後ろから前方へまっすぐ押し出すことで、足が外側に開いたり(外転)、ねじれたり(内外旋)するのを防ぎます。さらに、足が地面を離れる瞬間に「お尻の付け根」を手のひらで軽く前に押すことで、股関節の伸展をサポートできます。

【重心は「非麻痺側」に置いておく】

「麻痺側に体重を乗せなきゃ」と焦るあまり、過剰に麻痺側へ誘導してしまうことがあります。しかし、重度麻痺の場合、一度麻痺側に沈み込んでしまうと、そこから次のステップへ体重を戻すのが非常に困難になります。

介助の意識としては、「基本の重心は常に、良い方の足(非麻痺側)に残しておく」くらいがちょうど良いのです。非麻痺側が安定しているからこそ、麻痺側の足がスムーズに振り出せます。リズムに乗って歩けるようになってから、少しずつ麻痺側への荷重を促していけば良いのです。

おわりに:

準備が整えば、歩行は変わる 着用も意外と難しいものですが、介助者が焦らずどっしり構えていることが、患者さんの「一歩踏み出す勇気」に繋がります。まずは準備の段階から丁寧に、かつ効率的に行えるよう練習していきましょう。

【最後に】

最後までお読みいただき、ありがとうございました。 装具の扱いや歩行介助は、患者さんの安全とセラピストの身体を守るためにも、確かな手順とコツを知っておくことが不可欠です。この記事が皆さんの明日からのリハビリの支えになれば嬉しいです。

さて次回は起立・歩行以外にリハ室で何かしていないとそれはそれで先輩方からは何か言われます。いやもう絶対に言われます。実際それだけでは大きく不足していますがそちらは身に着けるのに時間がかかります。しかし無策で挑ませるのは違うと思ったので書きました。次回、起立、歩行以外の片麻痺向けの引き出し、ちゃんとある?に答えるには もぜひ読んでみてください。

この「脳卒中シリーズ」を最初から順に、または一覧で確認したい方は、以下のリンクをご活用ください。 ・[▶ このシリーズの記事一覧はこちら]

また、歩行をさらに改善するための装具選択の考え方や、より高度なリスク管理について学びたい方には、以下の関連マガジンもおすすめです。 ・
[▶ 【脳卒中装具シリーズ】歩行を劇的に変えるデバイスの選び方] ・
[▶ 【リスク管理シリーズ】急変を防ぐための実践的観察ポイント]

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このテーマをもう少し広げて読みたい方へ

この記事の内容を実際の場面へつなげるときは、次のような判断で迷いやすくなります。

  • KAFOの着脱で何を先に確認するか
  • 介助位置をどう決めるか
  • 事故を防ぎながら練習量をどう確保するか

関連する具体例や、別の場面での考え方は、note・Kindle・ツールにも整理しています。

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